- スピード採決された「共同親権」とは
- 共同親権は今後の婚活現場にどういった影響をもたらすか
- 政治的な思惑も…
共同親権とは、離婚後に父と母両方が子どもの親権を持つことを認めるというものですね。
現行法では両親の離婚後は、父母のどちらか片方に親権を付与するものとされていますが、
今回の法改正では、離婚時に父母の協議のもと、共同親権にするか単独親権にするかを選ぶという規定に変わる、ということになります。
これは今後の婚活現場にどう影響してくるのでしょうか。
共同親権がもたらすもの
これまでの離婚後片親での親権制度が、「父母共に親と認められるようになった時」、どういった社会的、心理的変化が予測されるでしょうか。
2024年5月、法案が参議院可決した時点での予測をまとめていきたいと思います。
- 共同親権は原則ではなく、単独親権を主張することができる
- DV・虐待がある場合は共同親権は行使できない
- 「父母間に共同親権の合意が無いこと」は、裁判所が親権者を決定する際に単独親権と判定する大きな要素になる
共同親権の施行による良い側面
離婚数が減る
共同親権になるということは、これまでのような離婚後どちらか一方に親権があるという状態ではなくなるということですね。
もちろん相手に明らかな落ち度(DVや虐待、犯罪など)があって別れた場合は別ですが、今後は一緒に暮らしていない側の親にも親権が認められるようになります。
これにより、夫婦間に子どもがいる場合はそもそも離婚する意味が以前よりも薄れるため、結果として離婚数自体が減ると予想できます。
もちろん子どもがいない夫婦の場合は縛りがないので、こちらで言うところの離婚数には影響がないでしょう。
子の貧困を抑止しやすくなる
これまで、一人親で子を育てる場合、非正規勤務や時短勤務に就いて働かないと難しい局面に立たされる親が多く、その子は自身が独立するまでは貧困家庭での成長を余儀なくされるという事態に陥りやすかったのです。
これが共同親権の施行によって、一緒に住んでいない親からの養育費の支払いを請求できる制度(法定養育費※)が新設されるため、子の貧困を食い止める足掛かりになるのではと期待されています。
※現状この新制度の具体的な中身は提示されていないため、新しい情報が出次第この記事に追加していきたいと思います。
2024年現在は、離婚後に父母間の取り決めや家裁の調停・審判がないと養育費は要求できないものとされています。
離婚後も両方の親が子どもと面会(交流)できる
これまでは、親権の無い側の親は面会の機会に子に会うという形でしたが、法案施行に伴い、一緒に住んでいない子に会いやすくなります。
これにより、子ども視点からみて、一緒に住んでいない親とももっと会いたいと思っている子には良い法案になり得ます。
親権争いが無くなる
人によっては骨肉の争いとなっていた親権争いが無くなります。
裁判所を挟んだり弁護士を通したりして心身ともに疲弊する中で長期間にわたり親権が決まらず泥沼化するケースもあると聞きます。
また、子ども(15歳以上が条件)は父(母)と暮らすことを望んでいるが、監護の実績や継続性は子どもの希望とは逆の親にあるといった時などの、子どもから見た時の、どうにもならない辛さが軽減されるのではないでしょうか。
共同親権の施行による物議をかもしそうな側面
この法案はスピード採決されました。
スピード、ということは反面、強行突破された側面もあるということです。
ここで、将来的に問題になりそうな側面をあげていきます。
間接的な一夫多妻もしくは一妻多夫が可能に
離婚後も両親が子の親権を保有するということは、間接的な一夫多妻もしくは一妻多夫が可能となるということです。
別の言い方をするなら、時間差一夫多妻もしくは一妻多夫が可能となるということです。
もちろん厳密な話になると違うのですが、精神面で考えるとそれが実現してしまうわけですね。
結婚して相手との間に子どもができ、その子が自分の子であると認められる場合、その子は確実に我が子になりますよね。
これまではそれが片方の親だけに認められていたわけですが、法改正によってこれが覆るというわけです。
江戸時代までは正室と側室という文化がありました。
殿様1人に対し、何人もの女性が殿様1人の子を産んだわけですね。
大奥ですよ、大奥。
当時の時代背景を考えれば世継ぎを産むことが最優先されていたため、こうしたものも成り立ったわけです。
けれどそれは現代では通用しないですよね。
ましてや殿様でもなんでもない一般人なわけですから。
話を戻します。
例として、女性側は生涯をかけて1人の相手としか結婚せず、男性側は3人と結婚して全ての女性との間に子どもができたとしましょう。
この時、男性側が全てにおいて共同親権が適用された場合、間接的な一夫多妻が実現するわけです。
もちろん女性に置き換えても同じことが言えますよ。念のため。
こうなった時の女性(男性)の心理はおざなりでいいのでしょうか、という話です。
また、これが間接的に子どものいじめ問題になる可能性もあるため、物議を醸すでしょう。
両親が別れた後の子どものアイデンティティの揺らぎ
これまでは父親か母親のどちらかに親権が行き、一緒に暮らして育てている側の親が子どもの親になっていました。
これが共同親権になると、子は一緒に暮らしていなくてお金だけくれている親も自分の親だと認識することになり、ここではちぐはぐな感情を持つ子が出ると考えられます。
これは子育てや教育の分野になるので専門的な話は避けますが、少なからず感情面で揺らぎを持つ子が出ると予想できます。
また、共同親権を選択した場合、子の教育面や重要局面でも別居親の合意が必要になるということになるため、うまく話がまとまらなかった場合、子に負担が行くであろうことが予測されます。
こうなってしまったら本末転倒ですね。
共同親権が婚活に与える影響
社会的、心理的にも影響の大きそうな共同親権ですが、こと婚活においてはさらに大きく影響が出そうですよ。
結婚が慎重になる
これまでは万が一何かあったら離婚して愛情の多い側が子どもの親権を勝ち取るという流れがありましたが、共同親権が施行されると心理的にそれが難しくなります。
もちろん虐待やDVなど、れっきとした別れる理由があれば話は別ですが、現実には虐待やDVはそこまで件数が多くなく、性格の不一致や相手の不倫などが離婚理由としては多いです。
その結果、すぐに別れそうな相手とはそもそも結婚しない、という流れに繋がり、これまで以上に結婚自体が慎重になると考えられます。
これは少子高齢化に逆行しているように思えるのですが。
再婚子持ちの人は婚活が難しくなる
実際に共同親権が施行されるのはおそらく2年後でしょう。
しかしこの改正法案は施行より何年か前までの離婚にも適用されるというのが現段階で法案に盛り込まれている為(遡及)、今後は再婚で子ありの人の婚活に影響を及ぼすと予想できます。
具体例として、
実際に筆者が目の当たりにした結婚相談所でのお話。
再婚子ありの男性は対象から外してください
それはどうしてですか? 理由はありますか?
元妻が親権要求してきて話が通ったら、私はその男性の連れ子を自分の子としては見れないし、法定養育費制度の新設で男性側が今まで払っていなかった養育費を払うようになるかもだから
これは起こりえる未来でしょう。
もちろんAさんを男性に置き換えても通る話です。
なお、現行法では絶対に養育費を支払わないといけないという義務は存在しないため、男性でも女性でも、別れた相手の子に養育費を払っていないケースが後を絶ちません。
このあたりは本法案が施行されるまでに何がしかの改善がされるのでしょうが、このままの形での施行となれば、再婚子ありの男女の婚活はこれまで以上にハンデとなるでしょう。
そうした場合、筆者であれば再婚子ありの婚活者には、同じように再婚子ありの相手を選ぶように提案します。
実際にお互いが近い条件の方が話が進みやすいです。
選択的シングルマザーの増加
選択的シングルマザーとは、女性が男性と結婚せずに、第三者の精子提供により子どもを設けることです。
これは女性の心理であり得る話なのですが、共同親権が施行された際は、「もう下手な相手とは結婚できない、だったら一人で産むし、一人で育てる」と決意し選択的シングルマザーを選ぶ女性が増えるのではないでしょうか。
実際にSNSを覗いているとそうした女性の声も少なからず見られます。
こうなると政府の思惑とは裏腹に、ひとり親世帯への給付金額は減らないまま、結婚慎重派が加速するように思えます。
政治的な思惑
すでにSNSで声が上がっていますが、この法案は「日本人の離婚数を減らすことにより結果的にシングル親手当を削減して財源を確保するための根回し」であるとの説があります。
日本人の離婚件数は今や3組に1件となり、単身親世帯に給付するシングル親手当も膨れ上がっています。
政治的な思惑として、社会保険料にまわす財源確保の一環として、シングル親手当の削減が標的になったのではないか、とする声があります。
何か大きな理由(虐待やDVや犯罪)があれば同意せず離婚後も親権は片方のみになりますが、この改正法案の目的は、離婚数自体の抑制であると考えられます。
政府にとって特に都合がよくなるわけではない「夫婦別姓」や「同性婚」は頑として認められない点から、政府側から見て不利益になるものは後手に回されるか、無かったことにされるのに、共同親権はスピード成立…。
今回の改正法案は、表向きは「子どものため」のように思えますが、内実は「離婚数の歯止めと財源流出の抑制」を目的とした法案のように思えます。
本法案の違和感
本法案のスピード可決はどこか違和感があるというか、血が通っていないように思えます。
果たして法案の立案から採決において、離婚してシングルとなった人たち当事者の意見は少しでも取り入れられていたのでしょうか?
なお、興味深い事柄として、G20を含む主要24カ国のうち単独親権のみを採用しているのは、日本を除くとインドとトルコのみであることが示されています。
また、日本はハーグ条約に批准していますが、国際結婚をした夫婦の日本人側の配偶者の「子の連れ去り」が問題視されています。
政治的な思惑という意味で、ここにも繋がっていそうですね…?
他の法案はなかなか整備されないのに対し、共同親権についてはあまりにもスピード可決だったのが大きな違和感となりました。
政治不信感
政府の子ども支援計画として、今後は年収200万円以上の人からは毎月子ども支援税を徴収する方向で決まっています。
こちらもスピードが早かったですね。
かたや議員の裏金問題は何ヶ月も燻り、甘い懲罰、もしくはうやむやのまま。
就職氷河期世代は打ち捨て。
働いていない高齢者からは徴税できないと分かっているため、やはり取れるところから取ろうとしているように思えます。
自分たちの問題は解決しないまま、働く世代の負担だけが増していきます。
裏金問題はもう未解決事件になるかもしれませんね。
取れるところから取るしかない、削減できるところは削減したい、となれば、その層(シングル手当)に目が向くのも必然です。よね?
それで、共同親権は婚活にどう影響するの?
おそらく2年後、単独親権から共同親権に変わることにより、結婚に慎重になる人が増えると予想できるため、婚活者にはあまり好ましくない環境に変わっていくと予測します。
もちろん、年齢などの理由によりお互いが子なし夫婦としてやっていくと決めている場合には影響しません。
問題は、子どもを見据えて婚活をしている人たちや、再婚希望の子あり婚活者に影響が出ることです。
さらに、経済的事情や恋愛経験不足により結婚控えをしている人たちは、より一層婚活に慎重になってしまうでしょう。
政府の一挙手一投足に疑念の声が聞かれる中、それでも婚活者は前に進んでいかなければいけないというシビアな時代に突入しています。
恋愛自体に奥手な若い世代や、取り残された就職氷河期世代、間近に迫る高齢社会、一方的に労働世代への負担を強いる政治。
婚活当事者は可視化されない苦難の時代を迎えているのかもしれません。
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